「いつか誰かが」では、人生が終わってしまう。東京・世田谷区で同性カップルが婚姻届を一斉提出

世田谷区役所に婚姻届を一斉提出した同性カップルら3組。

「いつか同性婚ができたらいいね、と何十年も思っていてもしょうがないんだなと思いました」

結婚を求める同性カップル3組が2月7日、東京・世田谷区で一斉に婚姻届けを提出した。世田谷区役所北沢総合支所には、この3組と書類の都合上この日に婚姻届を出せなかった男性カップル1組、合計4組が集まり、一斉提出をした理由と思いを語った。

4組はいずれも、世田谷区で同性カップルの権利平等を区に働きかける団体「世田谷DPR(ドメスティック・パートナーシップ・レジストリー)」のメンバーだ。

DPRは、同性カップルの存在を地域で見える形にして公的な承認や権利の平等を手に入れる活動をしている。

4組のうち、西川 麻実さんと小野 春さんのカップルは、2月14日に始まる「結婚の自由を全ての人に」訴訟の原告だ。同訴訟では、13組のカップルが同性婚の実現を求めて国を提訴する。

西川さんと小野さんは原告で唯一子育てをするカップルでもある。一斉提出の席で、家族として生きるセクシュアルマイノリティの人たちや、その子供たちに目を向けて欲しいと訴えた。

■ 同性カップルの家族に、目を向けて

西川麻実さん(左)と小野春さん。

「私たちには、かつての婚姻でそれぞれが産んだ子供が、私に2人、西川に1人いるのですが、その3人の子供を連れて、5人家族として14年間世田谷区で暮らしてまいりました」。記者会見で小野さんは、自分たちの家族についてこう切り出した。

「しかし同性のパートナーとは結婚することができず、そのために共同親権を持つことはおろか、同性パートナーやパートナーとの子供との関係性を証明する手立てもありません。パートナーが私の子供を入院手続きをしようとしたところ、断られるなどの困難がありました」

小野さんが代表を務める、LGBTファミリーの会「にじいろかぞく」には、多様な家族が所属する。自分たちのようにLGBTで子育てをしている人たちは、都市部に限らず全国にいると、小野さんは話す。

ただ、そのことはあまり可視化されていない。それは、子育てするLGBTの人たちが声をあげにくい状況にいるからだと小野さんは説明する。

同性婚が認められていないということは、同性カップルが社会的に認められていないということ。社会に認められず、セクシュアルマイノリティへの偏見が残る世の中では、子供のプライバシーや安全を考えると親たちは声をあげにくい。

小野さんと西川さんの家庭でも、子供たちが偏見にさらされないよう、常に気を張っていなければならないそうだ。子供たちが「家族で出かけても、そのことを外で話しにくい」と口にしたこともあったという。

■ 乳がんになって思い知らされた、セーフティネットのなさ

区役所の夜間受付に提出した婚姻届。記入欄の「夫」は、手書きで「妻」に訂正されていた。

小野さんたちが、同性婚の必要性を強く感じるきっかけになったのは、3年前に小野さんに乳がんが見つかったことだった。抗がん治療や手術を受ける中で、自分たちがいかにセーフティネットのない状態で暮らしているのかを思い知らされたという。

病院の説明には、家族しか同席できないと言われた。パートナーが手術の同意書にサインできるかどうかわからずとても不安だった。仕事量を減らしたくても、相手の扶養に入れなかった。もし自分の身に何かが起きたら、相続の権利も子供の権利もない状態でパートナーに多大な負担を残してしまうかもしれない――。

ただでさえ治療で身体的にも精神的にも大変なのに、不安が尽きなかった。もし結婚できていれば、こういった消耗をしなくてもよかったはずだ。

「同性だという一点において、生活保障が全て平等にされていない、手に入ることがないということに、はっきり気づきました」と小野さんは語る。

自分たちのようなLGBT家族が、日本中で同じような不平等な立場に置かれている。パートナーや子供たちのためにも、そしてその他のLGBTファミリーのためにも、西川さんと小野さんは顔を出して原告になる決意をした。

「すでにいる家族のことを無視しないで欲しいと思っています。色々な家族がすでにいます。その家族とそこで育つ子供たちのこともちゃんと見て欲しいなと思います」と小野さんは訴えた。

■ ふたりの母に育てられて、思うこと

記者会見には、小野さんと西川さんのお子さんも駆けつけた。「おめでたいことなので、応援と祝福をするためにきました」と笑顔で語ってくれた。

2人の母を「とてもいい人たちです」と話すお子さん。以前は、家族のことを話しにくいと感じた時期もあった。

「友達が家に遊びにくると、母親が二人なのを説明しにくいこともありました。ただ、LGBTっていう名前が広がったことで、説明しやすくなったかな」

普段は家族のことを積極的に話すわけではないが、友達に聞かれた時には、隠さずに説明している。

「だんだん差別的なことも減っていますし、同性カップルがいることはデータからも、わかっています。同性で家族を作る人たちが、普通になって欲しいなと思います」

■ 原告と一緒に変えていきたい。同性カップルの思いと願い

鳩貝啓美さん(左)と河智志乃さん。

西川さん、小野さんと一緒に婚姻届を出したカップルにも、それぞれのストーリーと同性婚への思いがある。

河智志乃さんと鳩貝啓美さんは、12年間人生をともにしてきた。一人の収入が減った時には、健康保険の扶養に入れず、配偶者控除も受けられなかった。入院した時には、病院に二人の関係を必死に説明しなければならなかった。

家族として支え合いたいのに、今は何が起きるかわからない不安な状況。自分たちの後に続く若者たちのためにも、私たちが黙っていてはいけないという思いで婚姻届を提出した。

古谷光枝さんとAさんは付き合って17年。精神的に支えあいながら生きてきた。2015年に世田谷区でパートナーシップ制度がスタートした時には、初日に宣誓。結婚をのぞむ同性カップルがいると社会に訴えるため、今回の一斉婚姻届提出に加わった。

TさんとJさんは、国際結婚をした男性カップルだ。Tさんは生まれも育ちも世田谷区で、Jさんはフランス出身。

二人は、婚姻の平等がすでに実現しているフランスで2014年に婚姻届を提出し、正式な家族となった。しかし日本に帰ってきた途端、結婚指輪はただのアクセサリーになってしまう。憲法には「すべての国民は法の下に平等」と書かれているのに、婚姻で差別されるのはおかしい。一人一人が尊重される社会を目指すために、日本でも婚姻届を出すことにした。

世田谷DPRの呼びかけ人・世田谷区議会の上川あや議員は、婚姻届を一斉提出することで、声をあげられない地域住民の実際の声を届けたかったと語る。

「ゲイやレズビアンの人たちは、地域に根ざして家族として暮らしているのに、周囲にはオープンにできず、孤立しています。黙っているだけではダメだと思いました」

冒頭の「いつか同性婚ができたらと、何十年も思っていてもしょうがないんだと思った」という発言をした河智さんも、アクションを起こすことで社会を変えていきたいと口にした。

「いつか誰かがやるとか、なったらいいねなんて思ったら、人生が終わってしまう。同性婚を望む人たちは私たちの後ろにもいっぱいいます。準備ができた人から、どんどん顔を出していきたいと思っています」

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Source: ハフィントン・ポスト